ベラヴェージスカヤ・プーシャ国立公園
/ビアロウイーザ森林保護区

国名:ベラルーシ共和国/ポーランド共和国
所在地:ベラルーシの西部とポーランドの東部 両国境にまたがる地域
面積:930平方キロメートル
登録年:1979年ポーランド共和国 1992年ベラルーシ共和国
登録基準:自然遺産

中央ヨーロッパの東側の緑、ベラルーシとポーランド両国境にまたがって、ヨーロッパ最大の森林地帯が広がる。 ベラヴェージスカヤ・プーシャ国立公園とビアロウイーザ森林保護区である。 ここはヨーロッパで最も大型の陸上動物、ヨーロッパバイソンの王国である。
ヨーロッパバイソンはこの森から一旦姿を消してしまったが、その後、人の手によって再びその姿が見られるようになった。 この地域は動物や植物の種類がきわめて多いことで他に類を見ない。 ポーランド川の森林地帯は1920年代に早くも保護区に指定された。
※ビアロウイーザ森林保護区には、いまだ手つかず原生混交林が残っている。

倒木はそのまま大地に横たわり、コケやシダにおおわれている。 かつて、この地域にはポーランド王室の狩猟場があった。今日では動物の命を脅かすものではない。
ナベコウを初めする絶滅寸前の稀少種がビアロウイーザ森林保護区には生息している。
ヨーロッパバイソンの森 森の王の風格を漂わせるヨーロッパバイソンが木立の中を行くと、下生えの雑木が激しく揺れて大きな音を立てる。
光り輝く目であたりを睥睨し、全身の剛毛を震わせてカシの木の森を足早に進んでいく。ヨーロッパバイソンは太い角を使って地面を掘りかえし、落ちているカシの実を食べる。
ヨーロッパ最大の陸上動物であるヨーロッパバイソンは、体高が180センチメートルにもなる。
スペインのアルタミラ洞窟壁画などからもわかるように、このバイソンは氷河期を生き抜いて古くからヨーロッパ各地の森林に生息していた。
ヨーロッパバイソンはヨーロッパの広葉樹混交林やアジアの広葉樹ステップ地帯を生息地としている。これに対して、北アメリカのバイソンは草原に生息する。
ヨーロッパバイソンはかつてカフカスやロシアの西部からシベリア東部、中国北東部までのユーラシア大陸に広く分布していた。ベロベカシヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区では、森林地帯の沼沢の多い場所やなだらかな山の中腹、そして草原などでこのバイソンを見ることができる。 今世紀に入ってヨーロッパバイソンはほとんど絶滅してしまった。
イギリスからロシアまで、何世紀にもわたる森林の伐採で生息地が減少したことと狩猟技術の向上が原因である。あとはわずかな数がリトアニアの一部の公園とベロベシカヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区に生き残るだけだった。
最後の1頭 1910年台、ポーランドの義勇軍がこの地域を拠点に祖国を占領するロシアへの武力抵抗を繰り広げていた。そのために兵士の食料として700頭近いバイソンが殺された。

第一次世界大戦後の1919年までには、この森のヨーロッパバイソンは兵士や密猟者の手にかかって狩りつくされてしまった。1921年2月9日、1頭のヨーロッパバイソンが殺された。
それはこの森に生き残っていた最後のバイソンだった。 このころ、独立して再び力をつけたポーランドはソビエト連邦を破って、当時の白ロシア共和国の西側の部分へ領土を拡大した。ベロベシカヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区の大部分もポーランド領となった。

1929年にポーランドはかつての王室の狩猟場だった46平方キロメートルの森林を保護区とし、そこにドイツとスウェーデンの動物園から譲り受けた2頭の雌と1頭のヨーロッパバイソンを放して野生化をはかった。
第2次世界大戦後には40頭にまで回復した保護区のヨーロッパバイソンはその後も増えつづけ、現在では300頭が生息している。 第2次世界大戦中にソビエト連邦がかつての領土を回復したために、この森林地帯はポーランドとベラルーシの2国にまたがる形となった。
現在、ベロベシカヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区はヨーロッパの重要な動植物保護区のひとつである。

ベラルーシ側の面積はポーランド側の19倍の広さがある。森林地帯の大部分は平地で、この広大な領域はほとんど人の手が入っていない。ポーランド側には王室庭園公園、自然科学博物館、国立公園管理事務所、足の速い小型の野生馬シンリンターパンの囲い場などがある。
ベラルーシ川には建造物はなく、詩人の状態が保たれている。

シンリンターパンは中央アジアの草原地帯が原産地で、18世紀に絶滅してしまった。ビアロウイーザ森林保護区の囲い場にいるのは、家畜場との交配種である。 森林と泥炭地と沼沢地帯 ベラルーシ側の88パーセントは針葉樹林または広葉樹混交林で、平原の中に沼沢やなだらかな丘が点在する。
肥沃な大地は鬱蒼とした森林におおわれ、繁茂する樹木は26種類を数える。シナノキ属の仲間やマツ類、ヨーロッパナラ、ヨーロッパハンノキ、ヨーロッパヤマナラシなどで、樹齢300年に及ぶ大木もある。ここでの樹木はヨーロッパのほかの地域では見られないように巨木にまで成長する。
台地は水分を多く含み、沼や池がそこかしこに点在するので、倒木はすくにコケやキノコにおおわれる。川べりや樹木の間には泥炭地や沼地が広がっている。低木はクロウメモドキ属の木をはじめとする138種、地衣類は210種、コケ類は80種、菌類は1500種類記録されている。 植物だけではなく動物も種類が多い。

こうもりは12種もいるし、哺乳類は全部で55種類を数える。アカシカ、ノロ、イノシシ、アカギツネ、アナグマ、イタチ類などはかなりの個体数が生息する。オオヤマネコとオオカミはそれなりの数が生息しているが、クマはベロベシカヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区から完全に姿を消してしまった。 鳥類は212種類にのぼる。
オオアカゲラとミユビゲラの2種は、絶滅の危機に瀕している。ここは同一地域に棲むキツツキの種が地球上で一番多い森林地帯である。森の中を流れる河川沿いにはアシナガワシやヘビを主食とするチュウヒワシが獲物を求めて舞い、ナベコウやヨーロッパオオライチョウの姿も見られる。

保護区の中に引かれた国境線 ポーランドとベラルーシ両国にまたがるこの類まれな森林地帯の自然を世界遺産として守っていく道は、いまだ漠然としたものである。1991年にベロベシカヤ・プッシュ国立公園/ビアロウイーザ森林保護区共同管理委員会が設立されたものの、自然保護の方針は一致を見るにはいたっていない。ポーランドの自然保護運動家達は、森林保護区の早急な拡張を訴えているがまだ実現していない。
長らく敵対関係にあった両国の間の不信感は根強く、国境には金属製の柵が張りめぐらされ、動物が国境を超えて移動することをはばんでいる。
ポーランドとベラルーシの両国とも自由主義経済に移行してから再生逼迫のため、首尾一貫した自然保護政策を打ち出せずにいる。

ポーランド川の森林保護区は、いまだに森林伐採の危険にさらされている。さらに重金属による汚染と地下水位の低下も問題である。ベラルーシ側の国立公園に隣接した国営農場の農薬散布と化学肥料の使用に対しては、抗議運動が起きている。
1960年代に建設のはじまったベラルーシ側の全長90キロメートルにもおよぶ用水路は保護区の森林水系にとって深刻な脅威となっている。

 

ベラヴェージスカヤ・プーシャ国立公園を映像で楽しみたい方に

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